一橋大学(数学)入試問題分析

2014年度 一橋大学 数学入試問題分析

赤星が担当します。

整数論・確率の問題が厳しめなのは,「一橋らしさ」そのものである。今年も,第1問の整数論と第5問小問(3)の確率は,受験生に真っ向から挑んできた。講師としては,大変面白く解かせてもらっているが,一橋の数学は本当に一朝一夕ではどうにもならない。全体を通していえば,第2問,第4問は割かし平易であるので,ここで確実に得点をとり,第3問と第5問で小問の前半は確実に解答すれば,合格点は十分確保できるはずではある。「あきらめたらそこで終わり」ですよ。

[第1問]
素数で偶数のものは,2以外にないこと(他の素数はすべて奇数であること)から,a,b,cの偶数・奇数の別によって絞り込んでいくこととなる。
a-b-8>0かつb-c-8>0から,a,bは共に8以上ということに気づければ,それほど絞りこみはきつくないが,試験会場でそれを受験生に求めるのは難しい。

そこで,「受験生らしい発想」を想定してみる。

まず,第1式だけに注目すれば,a-b-8が素数であることから,①a-b-8=2 or ②a-b-8=奇数の素数ということになる。
次に,第2式を見ると,b-c-8が素数ということになるが,この式からも第1式と同様の帰結③b-c-8=2 or ④b-c-8=奇数の素数が導かれる。
そこで,この①~④がどのように両立し,どのように両立し得ないのか,を考えていくとよい。

①の場合,a,bは共に偶奇は一致したものでなければならない。そして,共に2であることはありえないことも明らかであるから,結局,共に奇数の素数である。
そして,かかる場合に,③,④はどうなるだろうか,というような順で考えていくとよかろうか(その過程で,いろいろ試行錯誤することにはなるが,cがそれほど大きくなることはありえず,結局2と3になることも発見できるであろう)。

[第2問]
ひねりはなく,粛々と微積分の計算をすればよい。全受験生完答すべし!

[第3問]
新高校3年生からは,数IIIで複素数平面が13年ぶりに復活(2001年までは数学Bで扱っていた)しているが,円上の作業で,回転とかは複素数平面で楽しく分析できる。どうも,今回は,作問の原点にあるように思われてしかたない。もっとも,今年の受験生はそれを知らないから,図形と式,三角関数で頑張るしかない。
(1),(2)はなんとか食らいついてほしい。
(3)は円上の点を座標でおくことになるが,ここで,(sin α,cos α)とおけたか(パラメータをαの1文字にする!)である。もっとも,難関受験生であれば,どこかでたたき込まれているはず・・・ですよね。

[第4問]
球になにか立体が内接する問題など,どこぞでいつも出題されているので,余裕だった・・・といえるようになってほしい。一橋では90年代に出題されていたし,東大も2001年で似たような問題が出ている(そっちのほうが難しいかな)。志望校及び同レベル大学の過去問20年分くらい解くのは当たり前?ですよね。

[第5問]
(1),(2)で実験(部分点かせぎ)し,(3)につなげる典型的な形式・・・だが,(3)に実験の成果を生かせるか,である。
結局,表がn-3回以上でないとどうしようもないことが見抜けたら,あとは,4パターン(表がn,n-1,n-2,n-3回)の計算をするだけなのだが,表がn-3回以上ということが運面の分かれ道ともいえるし,それほど実験から自明なわけではないので,頭の柔らかさは要求される。