2017センター試験コメント
【国語】
第1問 評論文
過去2年(2015年,2016年)に比して,やや本格的な出題となった。むしろ,過去2年が迷走といえるほど易しく,通常のセンター試験の問題に戻ったというほうが正しいといえる。制限時間内(20分程度)で40点以上を確保するには,過去2年を除く追試験を含む過去問のきちんとした対策が必要である。
さて,具体的な設問の分析に移る。2002年刊行の科学論からの出題となっているが,前半の論考は,いわゆる「科学論」というジャンルで現代文の問題を真摯に取り組んだ者であれば,どこかで見たことのある論考であるから,取り組みやすかったものといえる(問3までは平易である)。もっとも,問4については,本文で取り上げられた具体例から本文中の一般論への推論の正確な読解が問われており,正答の選択肢と誤答である(5)の選択肢とで迷う。しかし,本文中から的確に根拠を探し,それを適切に言い換えたものを探すという基本的な出題である(あえて解説をするとすれば,善悪2面を論じているのに,片面のみしか(5)は書いていないので不足となる)。なお,問5について,この設問のような「消去法パターン」は受験テクニックというよりは,選択肢の内容も正確に読解したうえで消す,ということになる。やはり正確な読解力が必要である。選択肢の内容の読解も覚束ないようでは心配である。センター試験の現代文は,選択肢を込めての分量となることにも注意をしておきたい。
本年程度の問題を20分前後で8割以上得点できる力は,一朝一夕では身につかないことは明白であるが,まっとうな努力を積めば得点は可能である。受験生自身の教養と,本文内容への親和性もさることながら,テクニックや付け焼き刃ではなく,腰を据えて国語の学習を行う姿勢を今一度確認されたい。
第2問 小説
1912年発表の小説とあり,読みにくいかとも思われたが,表記が修正されていることもあってそれほどとっつきにくいものではない。もっとも,本文が長く,ここで時間を浪費して古文や漢文にしわ寄せが出た者も少なくないだろう。効率よく必要な部分を読んで解答を絞ることだけでなく,この程度の分量を数分で読破できる程度の読解のスピードを鍛錬する必要がある。これも一朝一夕で身につくものではない。手垢にまみれたアドバイスとはなるが,日常から積極的に活字に触れる機会を確保すべきである(インターネットのメディアでもよいが,接し方如何である)。
さて,具体的な設問については,本文が長いものの,選択肢は消去法で容易に絞れるものが多く,さほど迷うことはないので,結果的に標準的である。仮に迷うものがあっても,本文中の表現や情景描写,行為態様や発言態様から素直に根拠を探せば自ずと正答に至る。問5では本文全体にかけての分析が求められているが,該当箇所のみに注目しながら解答に至れるため,それほど時間がかかるわけでもない。問3や問4が短時間で消去法によって解答できる力を養成することが指標となる。
第3問 古文
近世に書かれた擬古物語「木草物語」より出題。難易度としては昨年度程度。2014年,2015年と比べるとかなり優しい。
設問について。問1は傍線部が短くなっており,必要とする知識もごく基本的。(ア)がやや難しいかも知れないが,傍線前後の「葎」と「あてにらうたげ」の対照が読み取れれば解答にたどり着ける。問2の文法問題も基本レベル。落としてはならない。問3は傍線部前から主人公の気持ちであることは明らかで,「尼ならずは,見ではえやるまじき」が解釈できれば恋心であることは明白。問4はやはり傍線部直前の解釈が決め手。返事を待ちながらも周囲に人が多い状況を打開しようとしているのが読み取れれば解答は容易い。問5は和歌の解釈。選択肢のYの内容が大きな手がかりとなろう。基本語彙が身についていれば十分に正答にたどり着く。問6は内容把握。本文全体の確認作業が必要となるため手間が掛かるが,間違いの部分は明らかに本文に書かれていないものがほとんど。
センター試験古文対策としては,まず語彙・文法について正確な知識を持ち,かつそれらを手早く活用できる力を養うこと。解答の根拠となりうる部分を品詞分解し正確に解釈できるようにしたい。
その上で,古文の読解に必要な背景知識を蓄えながら,読解演習を繰り返し短時間で読みこなす総合力を身につければ,センター試験の古文では必要な結果が得られるだろう。
また,古文については出題レベルが難化した場合に備える必要もある。選択問題だけでなく,記述問題なども用いてより充実した読解力を鍛えていくとよいだろう。
第4問 漢文
新井白石の随筆より出題。難易度としては例年並みではないか。
設問について。問1は副詞等に関する知識問題。基本的な語彙ばかりなのできちんと押さえておきたい。問2は(1)がやや難しい。「千載」を含む漢字熟語を思い浮かべられると選択肢が絞られる。問題文のメインテーマが始まる最初の部分でもあるので,しばらく読み進めた上で解答を選ぶことになるだろう。同(2)はよみがなを意識すれば容易い。
問3以降は傍線部解釈や本文内容を問う問題。いずれも傍線部や解答の根拠となるセンテンスを特定しその意味を丁寧に取っていくのが原則。問4は選択肢2と4で迷うが,根拠となる傍線部の直前の文に選択肢2の「どのくらい距離を移動したか」と解釈できる部分がない。問5は「之」の意味をどう取るかだが,前後の内容から「これ」と代名詞として捉えるのが適当。問6は2つ前の文の内容に「未来」と「現在」,「現在」と「過去」についての言及があることを踏まえる。
センター漢文対策としては,まず基本の句形は当然正確に意味が取れるように押さえた上で,漢字の知識を充実させること(現代文の漢字の問題を難なく得点できるようにしたい)。特に後者が得点力の向上に大きく関わりがある。また,問3では「百里」「千里」の言葉を含むフレーズがと順接でつながれているが,この言い回しが一つのことを述べるための類似の例を上げているのだと判断できる,といった漢文に特徴的な表現の理解が備わっていることが望ましい。
※当塾の冬期講習のテキストで取り扱った文章内容が出題されました。
【数学IA】
IAについては,第1問が3部構成は昨年に引き続く。そして,内容も平易であるからここは満点を取るべきである。〔2〕の論証は図・数直線を利用すると素早く解決しうる。第2問のデータ分析は,2015年度が平易だった反省もあってか,昨年に引き続き,きっちりとした公式の運用や理解が求められている(やや配点上ページ数が多く,コストパフォーマンスが悪いともいえなくもないが,計算は少ないのでさほど問題にならない)。
引き続く選択問題であるが,確率・整数問題のセットは,類題の演習で対応がほぼ確実であり,奇をてらった問題は出題されていないのでこちらの選択が無難であろう。また,2次試験,一般入試を視野においても,センターレベルの確率・整数問題の知識は必須であることから,こちらの選択を塾としてはおすすめしておく。
全体を通しても,類題の演習ひとつで,制限時間を余して満点が狙いうるのがIAといえる。高3の5月ぐらいまででめどをつけておいてほしい。
【数学IIB】
過去2年に比すると,全体として素直な出題となった。すべて教科書の知識で解決できる。もっとも,相変わらずの計算量なので,考えている時間はない。すくなくとも,IIBに関しては,選択問題を数列・ベクトルのセットでいくのであれば,2006年以降はすべて同様のセットで演習できるのであるから,そのすべての過去問演習ぐらいはこなしておきたい。今年は,数列やベクトルのセットについても,昨年などよりは,誘導の意図が明確になって,素直な出題が増えた。ベクトルの問題は,交点のベクトル表記という基本的な内容であり,六角形の問題もどこかで解いたことがある問題だったのではないか。あとは,序盤の計算をどれだけ一発で,正確に計算し得たかで勝敗を分けたイメージである。計算力は一朝一夕では身につかないので,謙虚に演習をつんで欲しい。
(なお,これは私見であるが,選択問題で第5問を選択するのも一つの手である。学校でこれを扱っているところは少ないと思われるが,例年,この受験者層が少ない選択問題は,ただ単に計算をしていけばおわる問題が多く,今年も単に積分の計算をすれば終わりというような出題である。数列のめんどくささに比すればずいぶんコストパフォーマンスがよい。高校3年の夏ぐらいで,余裕のある者は,比較的少ない労力で自習が可能であるし,数年分の過去問で対応が可能になるので,選択肢の一つとして,たとえば数列・ベクトルの一方がめんどくさそうなときのもう一つのオプションとして準備しておいてもいいかもしれない。)
【英語筆記】
出題傾向は昨年とほぼ同じ。全体として易化。悩むような問はわずかだったように思われる。
設問について。第1問は発音とアクセント問題。選択肢に並ぶ単語は標準的なものばかりで日常会話にもカタカナ語として登場するものも多数あった。問題集を利用しながら,日頃から単語を調べる際に発音とアクセントにも注意を払いたい。
第2問は文法・語法,語句整序,応答文整序。Aの問6,Cの問1がやや難しいかもしれないが,それ以外は極めて基本的な知識を問うている。ここ数年で一番取り組みやすかった印象。
第3問は会話文完成,不要文選択,発言要旨のまとめ。Bの不要文選択はこの形式が出題されるようになってから最も取り組みやすい出題だろう。Cの発言要旨のまとめは,最後の問いでは全体を見直す必要があり時間がかかるようになった。
第4問は図表問題と広告等の読み取り。確認すべきポイトンが見つけやすく,本文に続くトピックを選ぶ問4も問題文最終段落を確認すれば一目瞭然。
第5問は物語文。やや難しい印象。一文一文は平易だが,物語の内容をつかむのに苦労した解答者も少なくないだろう。また問も本文を参照しパラフレーズを探すだけでは問3,4,5は解答を見いだせず,行間を読むような作業が求められている。
第6問は論説文。テーマがありふれたものであり,問題文もそれほど長くないため,内容の把握はしやすかっただろうと思う。
センター英語の対策としては,知識については市販の文法・語法問題集を利用して基本的な知識を確実なものにすることが重要。どこかで見たことのある問題が大多数で,反復して短時間で解答でき,間違いの選択肢がどうしてだめなのかの理由がわかる程度までトレーニングしたい。読解についてはセンター過去問やマーク模試過去問などを利用して800語程度の文章を7,8分程度で,ほぼわからない単語がないレベルで読みこなせることを目標に練習をするとよいだろう。
今年のレベルの出題であれば得点率が8割超えてもMARCH以上や国公立二次試験の問題は太刀打ちできない。英語入試問題の基礎の基礎と捉えて,完璧を目指すくらいの心構えで準備に臨みたい。