2018年センター試験問題分析(随時受験生のコメント等も追記)

一昨年度,昨年度,本年度に実際に受験したセンター高得点者の特徴や学習方法,科目選択(理科基礎,社会科)について,塾でデータを収集し,来年度の受験生のための指針を塾にてお知らせしています。
内部資料となりますので,WEBでの公開はいたしませんが,ご希望の方は,塾までお問い合わせください。
・理科基礎科目を1ヶ月以内で9割取るには(文系選択者用)
・数学IA・IIB高得点者の歩みからみる必要な演習量
・現代文高得点者からみる現代文の効果的な学習法(理系でも週1回の学習で8~9割が目指せる)→とはいえ,こればかりは授業を週1回だけ受けて欲しいに集約されてしまう?

【数学IA】(1月14日更新)
確率分野も含め,集合や論理の記号が多用されており,またデータの分析では公式そのものの数式計算の問題も出題された。きちんと原理原則からの理解が問われており,また,平年に比すると,やや計算量が増えたため,難易度としてはさほど変わらないものの,演習量の差が得点差になるような試験であり,良問といえよう。
(追記)センターを体験した高校2年生から,「データの分析」が困ったというコメントを多数寄せられたため,追記するが,序盤の箱ひげ図等の読み取りは平易である。中盤の陸上記録と体重,身長等の相関関係を読み解く問題は,選択肢の検討順序で勝敗を分ける。選択肢から,その選択肢の適否をどの図表を用いて行うか,という順序で手早く消去しなければ,どうしようもない。その意味では,事務処理能力が問われている。
※なお,体重÷(身長)^2(BMIの計算をしたことがある者なら知っているかも)というデータの変換がなされており,ぎょっとしたらしい。データの分析において,データ変換はよく行うが,その理論的背景までは問われることはない。素直に所与のものとしてつっこまないこと。そもそも高校数学で扱うデータの分析の分野については,そもそもが理論的背景の説明は抜きになっており,詳しくは大学で統計学を学ばなければわからない。公式等の使いこなしに重点を置き,演習してなれておけば十分である。
選択問題については,整数の問題はかなり素直である。2次試験のことを考えても,図形を選択するより,きちんと整数論を踏まえ,手堅くまとめた方がよいと思われる。
※本年度の得点状況からみても,手堅くまとめた者は,演習量を十分に確保していました。

【数学IIB】(1月14日更新)
弧度法の定義を聞かれた。過去には微分の定義を聞いたこともあり,こちらも原理原則の理解は必須である。全体的に,2年前に比すれば,出題の趣旨に疑問の残る出題はなく,穏当といえる。そもそも分野として十分な計算力抜きに実力を涵養することはできないのが数学IIBであるから,十分な演習を積んだ者が報われる出題である。IIBの教科書内容が終わった段階から積極的に自ら演習を始めておけば,直前に慌てることもなかろう。
※ラジアンに驚いた者も多かったと聞く。微積分の設問は,文字が多いが,そんなことに圧倒されてはならない。今年度も,手堅くまとめた者は演習量をやはり十分に確保していました。
※毎回思うが,第5問がいつものとおり穏当で,余裕があれば,と思いつつ,そこまでの余裕がある者はそもそも数列・ベクトルでも勝負ができるな,と逡巡している。

【国語:現代文】(1月13日更新)
デザイン論というべきかは甚だ微妙であるが,ネタとしては,面白く,読みやすい評論(【第1問】)。やや長いが,長いからどうこうというわけでもない。寧ろ抽象度が高く,分量は短くとも厳しい出題が続いた過去と比すれば,これがビハインドになることもない。
新テストでは,資料や図面が与えられる出題が見込まれる(試行テスト参照)が,今年はセンター試験において,初めて図が与えられ,それに関する出題があった。とはいえ,別段の対策は不要であり,臆する必要はない。当該設問について要するに,本問の図は,例えばグラフ等のように,図自体に特段の意味があるわけでもなく,本文中の具体例の一部に過ぎない。具体例から抽象論を推論(なお,最後の設問で本文構成を聞いているが,ズバリである)することがままある現代文,そしてセンターでは,度々と具体例に関する出題が問3でなされてきていることからすれば,通常の思考で事足りる。「戸惑った受験生も多いことだろう」,というコメントが多数あるが,このくらいで動じることはない。物議を「一部」で醸した地理のムーミンの足下にも及ばない(ような気がする。ムーミン問題も,出題の適否はさておき,目くじらたてるような出題でもないと・・・)。全体的には,小問単位での形式の違いこそあれ,ここ数年はことさらな難読文や時間的に無理のある設定はなく,素直な出題になってきている。
特に小説は本年は時間的にも短縮が可能で,80分の中では比較的時間を要せず仕上げることができる。本年レベルで時間が足りないというのは,そもそもそもそも活字に読み慣れていないか,演習量不足ということになるだろう。
※本年度は,満点を取った者もおり,理系でも8割以上を手堅く取っています。

【国語:古文】(1月15日更新)
 問題文は久々に歌論が扱われた。本文自体は極めて読みやすく,解釈に苦しむところはほとんどない。出題形式に大きな変化はなし。例年通り,問3以降は本文内容を問う問題。今年は「情」と「欲」の関係を的確に読み取り,解答の選択肢をしっかり吟味する必要があり,この点に時間をかけることになったと思われる。
設問については表層的な理解だけでは正答にたどり着くことはできないが,基本的な知識を持っていれば充分に対処できる。2015年以降はこの傾向が続いており,このレベルの問いであれば20分程度で片付けておきたい。
古文は,文法や単語レベルで必須とされる知識は高目と比べて少ないものの,解答を特定するために「あった方がよい」知識は幅広く,現代語の語彙,本文が書かれた時代の基本的な背景知識,過去に読んだことのあるストーリーのプロット,などが身につくと得点力がさらに安定してくる。これらの「外側」の知識は短期間の詰め込みで身につくものではなく,短時間であっても継続的な学習が不可欠。多くの受験生にとってできるだけ時間をかけたくない科目となりやすいだけに,効率的に学習のステップを踏むことが力を伸ばすコツといえる(それは古文に限ったことではないが)。
※本年度も満点得点者,理系でも8~9割をとれています。

【国語:漢文】(1月15日更新)
 本文は君主と臣との関係を述べるもので,漢文の問題演習をこなしていれば,論旨は目新しいものではなく,展開も飛躍を感じる部分がないので,全体として内容把握はしやすい。
設問については問3までは標準的な知識で対応できる。問4以降は正確な解釈を求めており,選択肢に含まれる文言をしっかり吟味しなければ誤答をつかまされることになる。大枠の把握だけでなく,漢文特有の表現の仕方を踏まえた上で,正確な読解をする習慣を身につけておきたい。
漢文も,古文同様に必須とされる知識はそれほど多くないが,読解においては現代語で使われる漢字の知識が大きく役立つ。従って句型などを身につけても,漢字の知識が乏しい場合は得点を伸ばすのに苦戦する。日頃から現代文で必要とされる漢字を着実に身につけつつ,定期的に漢文問題の読解の中で活かしていく訓練が不可欠である。

【英語筆記】(1月15日更新)
 出題形式が1つ減ったが,それ以外は前年と比べて大きな変化はない。出題内容についても全体を通して2,3問程度がやや難しいと思われる程度で,問われる知識のレベルは標準的。大問5の読解がやや難しい印象があるが,この程度のひねりはいなせる余裕がほしいところ。
内容を正確に把握することへの要求が,従来知識のみで対応できた問いでも見られるようになり,単なる知識問題はさらに減少したように感じる。ただし,読解に必要とされる知識は標準的なレベルで,その知識の運用ができていれば,解釈に迷う部分はほぼない。また解答の選択肢も紛らわしい点がない。普段のトレーニングの成果が得点に素直に現れる試験だったと思われる。
※本年度最高点 190点以上,8割以上を手堅く取っている者が多かったです。